2017.07 «  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  » 2017.09

スポンサー広告  --.--.--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この胸の切なさとトキメキをどうしてくれよう……。

『ビター×スイート』 遙々アルク /リブレ出版・ビーボーイコミックス(2007.11)
根強いファンがいながら、地味~な活動ゆえこれが初の商業単行本!
90年代後半にJUNE系列でデビューされているのですが、JUNE休刊後は同人活動(サイトや同人誌発行など)されていたようです。その当時、私は抑制期間に入っていて少数の“作家読み”状態だったため存じ上げませんでした。お名前を認識したのは私が“心のアニキ”とお慕いする(キモイ…)秋花さんのブログ記事でお見掛けした後です。

表題作「ビター×スイート」は【こんなお話】
―― 子供の頃から人づきあいのいっさいが苦手で、自分の殻に閉じこもって生きてきた青年・三日月。一杯のコーヒーを楽しみに通っていたコーヒー店で、快活なイケメン・村山より突然の告白を受けてから彼の静かな日常は変化していく ――
<毎回8ページの連載分・十二話と、描き下ろしの第零話&特別編、+α>
他「君は間違っている」、同人誌として刊行された作品の改作「雑巾姫」、「cleaning」を収録。

前述したとおり表題作は毎回8ページでの連載で、このボリュームと作者のカラーからか“極端な引きで次回に繋ぐ”といった作りはしていません。雑誌連載時に軽く読んでピンと来なかった方もまとめて読むと違った感想を持たれるかも。
というのも一話単独で読むと、登場人物のやり取りのスケッチのようにも見えるからです。或いは散文詩のようにも感じられます。が、通して読むと、主人公・三日月がいかに大きく変化・成長したか、それに比べて村山との恋人としての進展がいかに遅々としているか(笑)がようく分かります。特に二人の進展についてはエダさんの『普通の男』、『普通の恋』以上にゆっくりなんです。どれだけゆっくりかはご自分で確かめてください。私は村山が不憫で途中で計算出来なくなりました……(涙)。
どこか野外での村山の血の叫び、
「――あんなことやこんなこと…!/やらしいこともたくさんしたい…快感のあまり君を泣かせたい 僕しかいないと思わせたい!/でも…/本気すぎて君を抱けないよ…/かっこわるい男で申し訳ない――」
ああ、ここだけ抜くとヘタレ過ぎるけど村山は真っ直ぐないいヤツなんです、少なくとも三日月に対しては! でなければ対人恐怖症に陥ってた“つっきー”(命名村山)の懐にここまで食い込むことは出来なかったと思うもの。
そして私がこの人たちを愛しいと思うもう一つの理由は、恋に浮かれて他がお留守になっていない、二人とも自分の仕事や将来の夢があってきちんとそれを全うしようとしている事。もっともそれゆえになかなか“進展”(笑)しないのですが。

初読みの作家さんなのでこの一冊からのみの印象ですが、心理的・物理的に距離感のあるCPがその“隔たり”に葛藤する、というのが共通しているように感じました。その所為か、ストーリーの底流に哀しみがあって、ラブラブハッピーな場面でもサンバでGo!のようなお祭り感とは一線を隔しています。
また、普通の人の日常を描いていても、どこかファンタジックというか寓話的とも言えそうな独特の雰囲気、静かな佇まいを感じます。波長が合う人には堪らない魅力だろうと固定ファンの存在にも納得です。私も俄然ファンになりました。
マガビー掲載の表題作と「君は~」はやはりレーベルの色が多少反映されているようですが、それでも作者のカラーは歴然としています。が、同人誌からの収録となった二作の方がよりハッキリ個性が出ていることは否めません。
特に「cleaning」は鮮烈でした。
- 世界で一番小さいクリーニング屋の話 -という副題のとおりの、ささやかな主人公にひっそりと寄り添うような視線で語られる短編です。“鮮烈”と表現しましたが、何か特別な出来事や強烈なキャラが登場するわけでもなく、ドラマチックなストーリーが展開するわけでもありません。静かな日々、主人公のひたむきさと孤独、小さな店内の光と影、そしてほのかな慕情。これらが童話のような語りと共に描かれているだけなのです。しかし作品世界の持つ豊かさ、奥行き、余韻に完璧にやられました。落涙。
実はこの作品、J庭のカタログ(07/春)で紹介されていて凄く読みたかったのですが既に在庫なしとの記述(泣)。こうして読むことが出来、期待を上回る作品(私にとって)で本当に幸せです。

単にアクが強いというのとは違う、個性的な作家さんだと思います。人物のデッサン力に少々難有りではあるのですが、それを補って余りあるセンスを感じます(EX. 場面の選択や画面構成、光と色の使い方など)。書店ではシュリンクが掛かっていて確かめられませんが、オビを外して表紙絵とカラー口絵をよーーく見ていただきたいです(細かいところもネ)。
お好みに合うかどうかは是非ご一読の後にご判断ください。オススメです。

 [ 蛇足 ]
読んでいて、普通の日常さえファンタジックとか寓話的に感じられる作風に既視感が有り、あるつ脳を検索。この感じ……ハルノ宵子さんです。
遙々さんの作品がどこかドライである(絵柄?時代性?)のに対し、ハルノさんの作品はとてもウエット。キャラもちょっぴりかわいらしく優しい感じです(ハッキリかわいらしく丸みを帯びているのがふくやまさん)。ストーリーも優しくかわいらしいようでいて世の理などは厳然と描くキレもあり、ただ甘いお話を描く人ではありません。
一時期JUNEの挿絵でも活躍されていたのでご存知の年長さんはいらっしゃるはず。当時ふくやまけいこさんと共にファンタジックな作品やかわいらしいお話をよく担当されていらっしゃいました。寂寥感のあるものや叙情性に満ちたものについては独壇場だったと記憶しています。お家の事情で休筆されていると聞いたことがありますが、復帰はされないのでしょうか?『アスリエル物語』など中断されたままの作品に未練がある読者としては何らかの形で続きを描いて欲しいと願っているのですが。
ちなみに、作家のYしもとBなな氏が妹であることはファンの間では有名です(当然父は…)。



管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。