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日常雑記  2007.11.22

けんさく君は小さい見世物屋の、小さい“呼びこみさん”です。
“呼びこみ”とは大きな駅などで行く先をさがしているお客さんに、「ここならこんなものがありますよ」とごあんないするおしごとです。
また、大きなお店の呼びこみさんなら、大きな声でじぶんのお店のしなものを“せんでん”してお客さんをあつめるといったこともしますが、けんさく君のところのような小さいお店の呼びこみさんはそういったことはしません。お客さんのほうが、じぶんのほしいものをたずねてこられるのです。たずねられたときにスグ、じぶんのところにそれがあるかどうか答えなくてはなりません。とてもむずかしいおしごとなのです。
それでもけんさく君はラクなほうだと仲間からうらやましがられます。なぜならけんさく君がはたらく見世物屋「びーえる十和津屋」さんは出しものがとてもすくないからです。十和津屋さんはナマケモノなのでめったにあたらしい出しものを出さないのです。
ほんとうのことをいうと、けんさく君はそれが“ふまん”です。じぶんだってもっとたくさんのことがおぼえられるのに、十和津屋さんが出しものをふやしてくれないのでお客さんにこたえることができません。
そこでけんさく君は十和津屋さんがお店のまえに出している“ごあいさつ”の黒板のぶんしょうもおぼえることにしました。よく、はんばーがー屋さんなどの店先に「紅葉が見頃ですね♪行楽のお供にポテトはご一緒にいかがでしょう!?」とか「もうすぐクリスマス!○○チキンの予約、始めました。ご一緒にティラミスもいかがですか?」などと書いてあるアレです。そこに十和津屋さんはごあいさつのほかに、じぶんのひとりごとも書いているのです。十和津屋さんはナマケモノのうえにケチなのでじぶんのひとりごともムダにしたくないのです。

するとどうでしょう、「“アキヅキさん”の“かしみあノだんでい”を知らないか?」というお客さんがあらわれたのです。うれしくなって「ウチの見世物屋にそのことばがありましたよ!」と、店までお連れしたら……。
なんということでしょう、黒板のひとりごとが書きかわっているではありませんか!お客さんはがっかりして帰っていかれました。
けんさく君は泣きたくなりました。
けんさく君のおしごとは“ぜんぶをおぼえる”ことから始まるのです。わすれることはできません。十和津屋さんのおかしな出しものでもひと文字のこらずおぼえ、それでも足りずに黒板のぶんしょうまでおぼえてがんばっているのはいったいなんのためなのか?
お客さんのおやくに立ってよろこんでもらい、お客さんのよろこんでるかおを見て十和津屋さんもよろこぶ、そのことだけなのに。
おぼえたことばが消されてしまってはけんさく君にはどうすることもできません。

あとからそのことを知った十和津屋さんも、さすがにわるいとおもったらしく「こんどからは気をつける」と言ってくれました。“ごめんなさい”のことばはありませんでしたが、ヒネクレモノの十和津屋さんにしたら“上出来”です。
「これでもうちょっとがんばれる……」
つぶやいたけんさく君の声はネットのやみの中にすいこまれていきました。



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