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「歴史もの」(まんが)というと、私の世代ならやはり真っ先に挙げられるのは『ベルサイユのばら』だろうか。少し上の世代だと水野英子さんの作品だろうし、下の世代だと同じ池田理代子作品でも『オルフェウスの窓』辺りか。和ものなら木原敏江さんのお名前も出てくるだろう。
また、BL要素が濃い作品となれば神坂智子さんの『T・E・ロレンス』や、加藤知子さんの『天上の愛 地上の恋』も挙げられる。
が、最近はこの方面の作品にご無沙汰状態だったのだ、『日独』を読むまでは!(笑)
で、そのJ庭での収穫・堀江蟹子 『日独』を読んで、すぐに連想した作品がある。
それが、安彦良和 『虹色のトロツキー』(全8巻)。ただし、こちらは シリアスなのだが。

―――話は昭和十三年の満州、建国大学に辻関東軍参謀が一人の学生を伴って訪れたところから始まる。その学生・ウンボルトは日蒙二世で、父母は子供の頃に何者かに殺されたという過去を持つ。父・深見圭介はかつて陸軍で将来を嘱望された士官だったが除隊して満州鉄道入りをした経歴があり、除隊後も“何らかの活動”を行っていたらしい……。若きウンボルトは激動の時代の中で、父の死の謎、蒙古人(モンゴル民族)の行く末に悩み翻弄される。ようやく蒙古人だけの部隊「興安軍」の将校となるも戦局は次第に悪化していき、彼らも追い詰められていく―――

元々、戦前の満州の概略が知りたかったのだが、どこから手を付けたらいいのか分からず、悲劇ばっかり強調される本や無邪気に「五族協和」を賛美する本に当たってもイヤだし……。と模様眺めしていたら、深夜の某TV番組で取り上げられているのを見、まんがだったら入門編として楽かなー、という脳タリンな動機で読み始めたもの。
ところがどっこい、キツネタヌキのテンコ盛り集団が策謀に次ぐ策謀で、“全然ラクじゃない”うえ、若くて腰も定まっていない主人公はあっちこっちで翻弄されて憔悴し、戦闘シーンが増えていき……。動機が動機だけに、あっという間に“物語”としてまんがを読むのではなく、跋扈するキツネ男・狸オヤジたち確信犯の面々に眼が向く事となったのだった。
そう、この作品で何よりも面白かったのは登場する実在の人物の描写。 やった事の是非はともかく、このオヤジたちが誰も彼も個性がくっきりしていて、読めば読むほど知的好奇心を刺激するタマばかりなのだ! 石原・甘粕などの有名どころはもちろん、冒頭から登場しラスト近くまで大活躍(?)する鬼辻こと辻参謀や、“人道主義者”安江大佐、蒙古人にして興安軍指令のウルジン少将などなど。
これら知る人ぞ知る人物や建国大学の存在を知ったのは大きな収穫だった。もっとも安直な私はこれで充分“満腹”してしまい、その後の大陸史探訪は延期となっているのだが……(滝汗)。

著者の安彦さんはガンダムマニア・アニヲタだったら知らぬ者はいない「ファースト」のキャラデザイン兼作画監督ですが、今やすっかり「まんが家」さんですね。
卓越した絵の上手さで描かれるアクションや戦場はかなり迫力があります。
ただ、最初からまんが畑を歩いてきた作家とは若干“表現の仕方”(或いはまんがの文法)が違うように思います。うまく説明できなくて申し訳ないのですが、初読みの方は少々違和感を感じるかもしれません(初期作ほどではないにしろ)。
それから、初期の『シアトル喧嘩エレジー』(おそらく個人としての処女作・小説)から扱われていたモチーフ「無垢な(或いは理想を掲げた)若者が、周囲の大人たち(政治)によってボロボロにされていく」が、この作品でも見受けられるのが興味深いです。私が読んだ幾つかの安彦作品に扱いの軽重はあれど必ずといっていいほど出てくるモチーフなので、これは作者にとってよほど根深いものなのだろうなと想像されます。シリアスとコメディの違い以外で『日独』と大きく異なる点はここですね。歴史ものを描くうえで作者の視点が現在にあり、批評精神を持って描いている、という点では一緒だと思います(堀江さんの全ての作品がそう、というわけではないみたい)。

華麗なキャラも出てこなければ、萌えもなく、ややこしく、事実の真偽について不明の部分もある近現代史であり、イデオロギー云々という問題も抱えるテーマであり…、と小難しい要素がヤマほどある作品なので、誰にでも「読んで♪」とは言えません。
フィクションであることを理解したうえで、達者な筆で描かれる当時の風物、難しい政治状況、何より濃くて強い個性のオヤジたちの化かし合い(泥仕合?)を読みたい方にオススメします。
さあ、猛者はいないか!?



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