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―――こんなはずじゃなかったのに……。
読後ボー然としていた私の頭の中に真っ先に浮かんだのはそんな言葉でした。

『 刺青の男 - シセイノオトコ -  阿仁谷ユイジ (茜新社・エッジコミックス/2008.09)
 己で刻んだ印を背負い、愛を求め続ける男たちの物語。
 刺青を持つ三人の男たち(牡丹の潟木、ラナンキュラスの武藤、狂い鮫の埜上)。
 それらに絡む謎の男、久保田。社会の裏側を生きる男たちに救いはあるか…?

『僕のカタギ君』――ゲイナイトで再会した幼馴染みの潟木(チンピラ)と久保田(ペテン師)。半同棲中のラブラブバカップルにも悩みがあり……
『ラナンキュラスの犬』――先代の遺言を守り、頑なに“坊”を組の中で守ろうとする暴力団幹部の武藤。そんな武藤に焦れ、閉鎖された世界から抜け出したい“坊”は彼に選択を迫る……
『狂い鮫とシンデレラ』――金しか信じず凶暴さを隠そうともしない埜上は上納を取り立てに行った店で「生意気な目つき」の“オンナ”に出会う……(* 暴力表現がキツめなので苦手な方はご注意ください)
『みんなの唄』(描き下ろし)――ようやく再々会を果たした潟木と久保田、小さなアパートで新生活を始めた“坊”と武藤、愛し合うカップルのその後と“夢”は……
<以上の“刺青シリーズ”と『はるのこい』、『ゆめのあんない』の“生霊シリーズ”*を収録>

『僕のカタギ君』を雑誌掲載時に読んで、面白さと“久保田くん萌え”で阿仁谷作品をチェックするように。
まだ生硬な単行本一冊目はともかく二冊目の『ミスターコンビニエンス』も面白く読んだのですが、やはり“久保田くん”の魅力は特別!で、待ちに待ったシリーズの単行本発刊でした。
早速ガツガツ読んだ私が冒頭の如く呟くことになったのは描き下ろしの『みんなの唄』に張り倒されたからです。これは単純に“久保田くん萌え”するだけのお話じゃなかったのだ!!

刺青を持つ男たちはいずれも裏社会の人間です。漠とした不安を抱えながらも突っ張って生きている、そうした生き方をせざるをえなかったりせずにはいられなかったりする“真っ当”や“普通”とは縁遠い男たち。そんな彼らに直接・間接的に係わっていくことになるのが、久保田みつる――私が深く愛する久保田くんです。
彼は可愛らしい容姿でビッチな好き者然として登場しますが、実は相当したたかで強固な意志を持つ人間であることが一作目から描かれています。飄々としていて自堕落なようで、おそろしく前向き。自分がした事、これからする事についても逃げ出しません。
そういったことを感じ取ったからこそ彼に萌えたと思うのですがやっぱり私は甘ちゃん(恥)なんですね、彼の本当の覚悟が分かっていなかった。作中で暗示される未来がキチンと読み込めてなかったとも言えます。
描き下ろしの四作目はまとめとしてその後の彼らが描かれ、ここで私は久保田くんがどこまで覚悟を決めていたのか思い知ることになりました。
いやあ、彼は私が当初思っていた以上に本当の意味で好い男でした!!
「 君たちを傷つけたツケは僕にも必ず回ってくる 」「 …償いながら生きようね / 一日でも一秒でも長く / 一緒に 」と語る、自らの言葉の重さを誰よりも自覚し引き受けている弱さを知った上での強さ。もう本当にメロメロ(死語/汗)です。
作者もかなり思い入れが深いようで、「生まれ変わったら久保田になりたい(重症)」と仰っているくらいです。ホントに重症だ☆

ダラダラと久保田くんについて語ってきましたが、作品自体についてもちょっと……。
これはいってみれば“尾てい骨が長い”作品ですね。すなわちJUNEやヤオイの匂いが大変濃厚なのです。でもBLなんだよね。
決定的な差は、やはり明日を肯定しているところだと思う。
どんな小さなこと儚いことにも希望を見出し、美しく死ぬよりもどんな姿になってもしぶとく生きていく。
それは時にはとても残酷で心身ともに痛みに満ちたものであったりして、くじけそうになるけれど。それでも生き抜くんだっ!という意志を感じると言っていい。これは耽美の色彩が強かったかつてのJUNEと決定的に違うのではないか?

はっきり言って、読む側にも覚悟が必要な作品です。楽しい気持ちになりたいなら読まない方がいいでしょう。
しかしくどくどと述べてきたように単なる陰惨なお話ではありませんし、単純に「生きていればいいことがある」と安易な励ましを送っているお話でもありません。
作者が作品に籠めた熱い熱い気持ちとテーマを、是非読んでいただきたいと思います。
明るくて楽しいお話じゃなくちゃイヤ!という以外の方へオススメです。


* 『はるのこい』、『ゆめのあんない』
――好き過ぎる気持ちが片思いの相手の生霊を呼び寄せてしまい、ついつい手を……
という奇妙な味に満ちた不思議な設定で語られるえろくて純情な恋物語が併録の“生霊シリーズ”。
こちらは表題シリーズが強烈過ぎてワリを食った形かもしれません(笑)。
生霊といっても怖いお話ではないのでホラー系が苦手な方でも大丈夫だと思います。
特にラスト3ページはえろシーンから一転、ファンタジックな感動を覚える美しさです。




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