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お気に入りのカフェがあります。
かなり遠方なので滅多に行くことは出来ませんが、いつ行ってもびっくりするくらい寛げる心地のいいお店です。 初めて行った時からそうでした。 店内はオシャレなんだけど ゆる~いオシャレなので肩肘張ることはなく、何を食べても飲んでも美味しい。 ゆったりした空間でボーっと過ごすひと時は旅の疲れを忘れさせてくれます。
滅多に行けないカフェに替わり、『茅島さん』は私をそんな気持ちにさせてくれる作品です。

  茅島澄人氏は桁外れの資産家にして やんごとないお家柄の若く美しい男性である。
  働かなくとも生活には困らず無為の日々を過ごしている。
  そんな彼が恋をした ――― 『茅島氏の優雅な生活』 全3巻 遠野春日(ルチル文庫

『茅島さん』の不思議な魅力をどう説明したらいいのでしょう。
多くの既読の方は仰います、「茅島氏が可愛い」と。 「庭師がいい」との声もあります。
キャラクターの魅力が大きいことは間違いない。間違いないけど もう一歩踏み込んで考えてみたことを、以下に つらつらと綴ってみます。
  (すみません。長くなったのでタタミます)
① メイン・タイトルでもある<茅島澄人>というキャラクターが秀逸
金持ちでハンサム云々…といった“あらゆるものを持っている”設定は、BL界では珍しいものではない。 金持ち設定は攻の方が主流とはいえ既にゴマンと、それこそ掃いて捨てるほどいる。
むしろ茅島氏を飛び抜けた存在にしているのは “ない(持っていない)” こと、ではないだろうか。
彼は金品に執着しない。 功名心も持たず、虚栄心も無い(更には家族も、近しい縁者もいない)。 およそ俗世に暮らす者なら 何れかに囚われ煩わされるものなのに、彼はそれらに こだわりも執着も無い。
いわば世俗から解放された存在。 過剰なほどの世俗的な恩恵ゆえに世俗から解放されているというパラドックス。 ありきたりな設定が単なるドリームではなく、ちゃんと そうであるべき理由 ―キャラの重要な内的要素の裏付け― となっているので、大仰な設定も安っぽくならないのだと思う。
核がしっかり定まっていれば、目鼻や手足はすんなり出来上がったことだろう。

② 茅島氏と、恋の相手<彼>との対比の妙
<彼>とは文字通りの“彼”であり、茅島氏が「茅島澄人」という固有の名前で表されるのとは反対に、名前が一切 出てこない(表記は「彼」、「おまえ」、「庭師」など)。
“彼”と出会い 付き合いだすまで恋情も色めいた経験も無かった茅島氏と、早くから自分の性的指向に気付き経験値が高い“彼”。
家族は無いが周囲から“彼”との関係を温かく見守られている茅島氏と、未だカミングアウトが出来ずに郷里の両親や妹との間に微妙な空気が流れている“彼”。
余りにも現実離れ・浮世離れした感覚の茅島氏と 自然を相手に働く男 “彼”は、正に絶妙なバランスのカップルだ。

③ ロマンスとしての純度が高いこと
BLは「男と男の恋愛もの」ではあるが、単純に恋愛だけを描いているわけではない。
意外に純粋なロマンス小説というのは珍しいのではないか? ひねくれた私の読書体験では論拠にならないが、少なくとも今まで私が楽しんできたBLは恋愛以外にも様々な葛藤があるからこそ面白かった。 しかし本作は少々の山坂あれど、どこまでも“恋愛の”お話なのだ。
有り余るほどのものが備わっていながら“何ものも持たなかった”男が、財産は無いが夢を持つ男に恋をする。“恋する気持ちを持っている”と自覚をした途端、“彼”に執着し “彼”の好意を得たいと願い 形振りも構わなかった、この変貌。
一方的な求愛から始まり、何かとギャップのある二人が当初の温度差を乗り越え、ついには“彼”も茅島氏から離れて生きることは出来ないと観念するに至る過程は、正統ロマンスと言ってもいいのではないだろうか。

④ 連作集であること
現在のBL小説は極端な長編偏重となっている。
しかし短編には短編の良さがあり、逆に長編では出せぬ効果というものもあるのだ(長編が今イチでも短編は上手いという作家もいるだろうから、短編集形式の本があってもいいと思うのだが)。
本作は正にその短編を集めた連作集(茅島氏と“彼”がメイン)である。 そしてこれが冒頭で呟いた安らかな心地を生み出す要素の一つとなっているのだと思う。
そもそも『茅島さん』の世界は良くも悪くも重くない。 エピソードの一つ一つも、殺るか殺られるか、死ぬか生きるかといった深刻さとは一線を画す。
では どうやってドラマティックに見せるかといえば、特定の時間を切り取ることだと思う。 これは短編でこそ映える手法だ。
ランダムに並んだエピソードは読者に軽やかな印象と、もっと読みたいという欲求を起こさせる。 いつまでもこの世界に浸っていたいような効果を生むのだ。

⑤ ミーハー魂も満足!
大抵の読者にとって、茅島氏の住む世界はお伽話の世界である。
素晴らしい美術品がそこかしこに溢れている豪邸! お抱えの庭師が世話する広大な美しい庭園! それを眺めながらの優雅なティータイム! どれもこれも夢のようで憧れる。
また、本物のセレブリティーが参加する社交界にも下世話な興味があるし、お出掛けの仕度の為に美容師とスタイリストが来る(しかも毎回!)というのも一回くらいは体験してみたいし、何といっても“懐を心配せずにすむ買い物”というものがしてみたいではないか! (だって装丁の美しい本て高価いんだよ!!←また本かーい!/汗)
更には、恋人と行く湖水地方の旅にはもうヨダレが垂れまくりだ。 ああ憧れの庭園巡り……!!
もう一つ、個人的に超ウラヤマシイ!のがラフマニノフ(飼い犬)の存在だ。 何せ子供の頃の夢の一つがボルゾイ犬を飼うことだったんですう! 飼えばいいじゃないかと言われるだろうけど私の中でボルゾイ犬は、広い庭が無ければ絶対に飼ってはいけない、憧れのお犬さまなのである(サマにならないじゃんよ)。
やたらに金を使えばいい、という凡百の金持ちものとは格が違う わんダフルでビューティフルな世界 ― それも『茅島さん』の大きな魅力である。




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