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~~はじめに、恥ずかしながらおことわり~~
レビューを書こうと抱え込んでいるうちに煮詰まってしまいました。
下手に刈り込んで体裁を整えるよりはと、思い切って“ダラダラ垂れ流し状態”の文章を公開することにしました。お目汚し申し訳ありません。よろしかったらご一読ください(長いです)。


ここのところ、何かの合い間合い間のつまみ食いのような読書しか出来ず、イライラが募っていた。で、今日こそ、と時間を作って『上海金魚』『透過性恋愛装置』(かわい有美子/笠倉出版クロスノベルス)の一気読みをする。
『上海金魚』は気にしつつも長らく積読になっていたもの。『透過性~』が出たのはいい機会だと思い“掘り出し”てきたのだ。かわいさん2冊一気ならば不満解消にはもってこいのはず。果たして私の目論見は見事に的中するのだが、着地点は当初の予定とちょっとズレていた…。

1冊目『上海金魚』(商社マン・攻×地方公務員・受)、期待通り気持ちよく読めた、満足。
この“期待通り”ってやつがなかなか難しいのだ。期待し過ぎて肩透かしを食らうのはBLに限らず“ある”ことだから(食いしん坊の私は食べ物でよくある/笑)。
大事件や大騒動が起きるわけでもなく静かなしっとりとした話だ。こうした地味めな作品は、話に書かれている以上に背後に奥行きを感じさせないと薄っぺらなものになってしまうが、その点もクリアしていると思う。ところどころで過去のエピソードが挟まれるのだが唐突な感じがしない、作者の筆力に感嘆。かわいさんお得意の「こなれた大人攻×自信がない浮世離れした受」CPなのはご愛敬、作者にとって定番の強みだ。

2冊目『透過性恋愛装置』(一流ホテル企画部長・攻×建築家・受)、読書前にあまり情報は入れたくないが、「かなりのオレ様が受のコメディ」ということはどうしたって入ってくる。よーし、これで笑って締めじゃ!

冒頭の勤務先である設計事務所でのやり取りに始まってクラス会のごとき二次会での旧友との会話、コンペの説明会での態度、とオレ様北嶋の描写が続く。この辺りはもうニヤニヤ。いたいた、こういうヤツ!用心深く自分がTOPでいられる場所を“無意識に”探してオレ様道を歩むヤツ。そういう人間にもいえるが、北嶋も本当に子供なのだ、三十一歳にもなって!ただ、素直に良いものは良いと認められる分、可愛い気がある。これはオレ様北嶋の特筆すべき美点だと思う。
最初のコンペ(高齢者用高級マンション)応募書類を作成する場面で北嶋は日頃の仕事振りの一端を披露する。才能・センスはあるのだろうが何か“舐めてる”し、おのれの手の内だけで仕事をしていて、求められているものを見ていない。案の定、これを牧田(攻)に指摘される。不採用の北嶋の設計がセンス先行で、高齢者向け住居ならではの様々な状況を想定した建築ではないことをやんわりと説明し、黙らせてしまうのである。オレ様北嶋にとって、不快感なく心地良く“転がしてくれる大人”に出会ってしまったことが転機―即ちFalling Love―となるわけだが、この後の北嶋の変貌振りは笑いに拍車を掛ける。
なんとこのオレ様乙女は自主的に図面の書き直しを行ない、プチストーカーと化すのである。図面はただただ牧田に見てもらい「――自分という人間をほんのわずかでも見直してもらえるきっかけになれば――」「――自分が真摯に仕事に向き合うことも出来るのだということをちゃんとわかってもらえるのではないか――」わずかな期待、淡い願い…。何かとホテルに出没し、早朝の通勤電車で姿を盗み見る「――見てるだけでも幸せ――」!!!おーーい、こんな乙女いまどき何処に隠れていたんだよっ!
このストーカー行為が仇となって牧田にバッサリと振られるわけだがしかし、その傷心ぶりも正統派乙女もかくや、といった愁嘆場なのだ。
この辺りまでは笑って読んでいたのだ、大人子供ならではの悲喜劇だなと、頭の隅をよぎったが…。

ところが次は牧田から手を差し伸べられる。それは新たなホテル建設のコンペ参加への声掛けであり、当然プライベートとは一線を画している。が、いくら“大人”とはいえ通常考えられない告白をしてきた者に対してそこまで割り切れるものだろうか? 残酷だよ、牧田と呟いた時点で私の心情はオレ様乙女に寄り添っていたのかもしれない。果たして「僅差で負けた」との報が入ってくる場面で始まる章で、北嶋がいかに精魂傾けて設計に取り組んだかが語られると…不覚にもワタクシ落涙してしまったのです(恥)。
もうこの後はあきまへん。牧田に誘われての食事、手をつなぐだけの一晩…、ワシまで乙女に逆戻りかっ!つー、めそめそぶり。黒いニコちゃんはどこ行った…。
尤も、「一度だけでいいから」と懇願してのキスシーンのエロさと北嶋の反応に、再びニヤニヤ笑いが復活するのだから私の乙女は逃げ足が速い。

その後の怒涛の展開にはあ然ぼー然、えろ大盛りには万歳三唱となる。
いやはや、いいのかオレ様北嶋?オレ様乙女的にはオッケー♪なのかもしれないが、牧田ったら「可愛い」とは言うが「好きだ」とは言ってないぞ!「年下の恋人」という認識はあるようだが“なし崩し”に恋人関係に持ち込む辺り、結構ズルいぞ(笑)。おまけにかーなーり!の“むっつり”だぞ(あ、これはウエルカムか?)。
まあ本人が分かった上で「――でも、この男が大好きだ――」と締めているのだからこれでいいノダ!

それにしても何故ここまでくどく語ってしまうのか。
それは前述でも触れているがオレ様北嶋の仕事振りに関係する。
最初はおしゃれではあること、センスが良いことが彼の第一義であった。だが仕事で求められるのはそれだけではないと気付かされる。お金にも名誉にもならない自主的な書き直しに当たって、初めて熱心に高齢者向け福祉施設のことを勉強する。北嶋にとって初めて違う視点が生まれたのだ。しかしセンスの良さを捨てることは考えられない。クリエーターとして大変な葛藤があったことは想像に難くない(私としてはもうこの時点でキていたのだ)。
更に次のコンペでは4ヶ月もの間ひたすら一つの設計に打ち込む。普通、大きな仕事でも同時進行であれこれこなしていくものなのに、既に振られて決着は着いている相手に関係する仕事に没頭する。
何の為だったのか。彼を思い切り、忘れるため?或いは見返すため?
どちらでもないと思う。少なくとも牧田は自分のセンス、無償の図面で見せた対象への真摯さを買ってくれたはずだ、だとしたらそれに精一杯応えたい、と北嶋は考えたのではないだろうか。ここに至って設計は、北嶋にとって詩人が詩を書き画家が絵を描くようなものとなる。愛する人を讃え恋する気持ちを吐露する。貴方がどれほど素晴らしい人か、私はどれほど貴方を慕っているか、千万言を費やしても言い尽くせぬこの想いを彼は設計したのだ。なんと長大なラブレター!
<無垢な魂の無償の愛>は汚れた私のストライクど真ん中である。考え過ぎだと笑われようと、私はオレ様北嶋の一片の純情に涙を捧げる。

『透過性恋愛装置』 かわい有美子
  ill.花本安嗣/笠倉出版社・クロスノベルス(2007.5)



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